そうあいつはオムライス
チキンライスを卵で包んだ料理、オムライス。
日本生まれでありながら洋食の代表格、オムライス。
朝ごはんでも昼ごはんでも夜ごはんでも美味しいオムライス。
お子様ランチだと旗が立っている、オムライス。
みんな大好き、オムライス。
オムライス、中でも家で食べるオムライスが大好きだ。
母親が作るごく普通のオムライス。
どこにでも売っている普通のケチャップと、余りもののご飯で出来ているチキンライス。
具は冷蔵庫次第。スタメンは人参、玉ねぎ、ピーマン、コーン、肉、チーズ。
玉子でチキンライスを包む瞬間の母親は職人の目をしている。
「上手く包めた!」とか「破れちゃった~」とか感想付きで食卓に出てくる。
黄色い玉子に真っ赤なケチャップで名前かワンフレーズ。ときにはニッコリマーク。
ありふれたオムライス。
オムライスを食べはじめるときにやってくるのが「オムライス、端から食べるか?真ん中から食べるか?」問題。
端に寄った玉子部分に少量のごはんから食べるか、真ん中にスプーンを入れるか、更に言えば一口目はケチャップの付いたところか付いていないところかも重要だ。
そこからどう食べ進めていくかに人間性が如実に表れる。オムライス占いとかできる。(んじゃないかな~と勝手に思ってる。根拠はない。)
そんな中で未だに分からないのは、オムライスに合わせるべきおかず。
主食とおかずが一体化したオムライスに合わせるおかずは何が正解なのだろう。おかずはいらないのだろうか。オムライスはどこまで食べ進めてもケチャップ味。それがオムライスの持ち味だけれど、一食すべてケチャップ味というのもどうなのだろう…。やはりおかずはあった方が良い気がする。しかし、何を合わせればいいのだろうか。そして今日もおかずは決まらず、オムライスの端の玉子を箸休め代わりにするのだ。
外食をするときに「オムライスは食べない」と何度決意したことだろう。
半熟とろとろ卵も、バターライスも、ドミグラスソースも母親のオムライスに敵わないのは分かっている。
どこのオムライスを食べても、「うちのオムライスが一番だな」と思ってしまう。
そう分かっているのに、洋食屋や専門店でオムライスを注文し、「我が家のオムライスを超えられない…」とちょっとだけ後悔する。
すっかり前置きが長くなった。「オムライス」という単語がもう20回も出てきた。
なぜ、こんなにオムライスの話をしたかというと、ついに胸を張ってオムライスを頼める日がやってきたからだ。
かの有名な老舗、日本橋の洋食たいめいけんの姉妹店で、本店より手ごろな価格で洋食が食べられる。しかも上野駅から出ずに食べられる。
メニューを開くと、ハンバーグ、コロッケ、カレー、ポークソテー、エビフライ、ハヤシライス、クリームコロッケ……ご飯に合うのに"洋食"って面白いよなぁなどと考えているとオーダーを取りに店員さんがやってくる。
「たいめいけんランチひとつ。」
頼んでしまった…!
運ばれてきたのはランチサイズのオムライスに、サラダとボルシチ。
「う、う、うまい……!」
外で食べるオムライスにふさわしい。
しっかりチキンライスを包みながらもふわふわの玉子。
何個使ったらこんな風になるんだろう…
チキンライスもしっかり味がついていながらもしつこくない。
ケチャップ味でありながらマイルドで、ご飯なのにしっかり'洋'の味。
一気に半分ほど食べ進めたところでサラダを一口。
これだ……!
さわやかで、ケチャップ味の口の中が一回落ち着く。オムライスに合わせるおかずはサラダでよかったのだ。
ここでボルシチを一口。もしかしたら人生初ボルシチかもしれない。うんまーーーー。
ついに1500字を超えてしまったのでそろそろ閉めよう。
チキンライスを玉子で包んだ魅惑の洋食。
そう、あいつはオムライス。